2023年6月15日木曜日

【IP NOTE】AI基盤ビジネスモデルの知的財産権保護戦略

AI基盤のビジネスモデル(以下、BM)は、人工知能言語モデルのChatGPT3が配布されて再び関心が高まっています。特に、Open AI社がChatGPT3を配布した後、まもなくしてChatGPT4を発表して、産業分野を超えて全世界の注目が集まっています。ChatGPTが様々なサービスに繋がれば、新しいBMが出来上がる可能性があります。
それでは、AI基盤のBMの知的財産権はどう保護できるでしょうか?今回のIP NOTEでは、「AI基盤BMのIP保護関連1」を紹介したいと思います。

▲ Clipartkorea.co.kr

知的財産は公式な方法と非公式な方法で保護できます。公式には特許、デザイン権、商標及び著作権で保護することができます。一方、非公式には営業秘密、模倣難度を高めるための製品及び製造工程の複雑性強化、競合他社より早い革新で競争優位を確保するリードタイム優位戦略などがあります。本研究は開放型革新(Open Innovation)と既存慣行の均衡を保つのに重点を置いて公式及び非公式の保護戦略をAI基盤のBMにどう適用できるかを調べたものです。BMによって創出価値を極大化するために、公式及び非公式IP保護戦略の最適化及び補完が必要になる可能性があります。

●公式的IP戦略を適用するための課題

AI基盤発明を特許として保護するための主要な課題の一つは、アルゴリズムがAI概念を設計するのに重要な役割を果たし、アルゴリズムは“そのもの自体が”特許法上の数学的方法にみなされて特許対象から除外されるという点です。また、現在のAI概念は人間の精神によって遂行される作業や活動を自動化または遂行することを目標にする場合が多く、これは理論的概念に過ぎないか新規性が足りないという理由から特許不適格事由に該当します。しかし現在、多くのAI基盤の発明がソフトウェアに基盤して具現されていて、数十年間ソフトウェア基盤発明を扱う方法と関連する特許法及び慣行が構築されてきました。

▶ヨーロッパ
ヨーロッパでは、数学的な方法としてのAIは特許対象から除外されますが、方法が技術的な手段(例:コンピューター)か装置を含める場合、全体的に技術的性格が持てるので特許対象から除外されません(computer-implemented inventions, CII)。ヨーロッパ特許庁(EPO)は特許性を評価する時、「混合型発明(Mixed-type inventions)」に対していわゆる「二重障壁接近法(two-hurdle approach)」を適用して、人工知能方法が発明の技術的特性に寄与しているかを確認します。このような流れでEPOは最近、「人工知能及び機械学習」に対する特定セクションが含まれた審査指針をアップデートしました。人工知能及び機械学習に関する発明が特許として登録になるために必要な「技術的特性」を基盤にするか評価する方法に関する指針を提供し、関連事例とEPO控訴委員会の決定によるCIIの技術性についての詳しい情報を提供します。

▶アメリカ
アメリカでは抽象的なアイディアは特許として認められないので、難しい部分があります。また、抽象的なアイディアを具現するためにコンピューターを使用するだけでは特許資格を得るに十分ではありません。法律事務所Baker MckenzieはアメリカでAI発明に対する特許を取得するのに最も大きな法的障害物は、特許対象テーマを「工程、機械、製造または物質の構成」に限定して、抽象的なアイディア、自然法則、自然現象は除外するアメリカ連邦規定(35U.S.C.)§101であろうと説明します。このような特許対象資格要件に対する基準は、2014年にアメリカ最高裁判所のアリス・コーポレーション対CLSバンク判決でソフトウェアおよびコンピューター具現発明に対してより厳しい2段階テストが適用されてもっと強化されました。


●AI関連革新特許の現状

AI関連革新は、ソフトウェアとコンピューターで具現された発明を基盤にする場合が多いです。このような発明は一つ以上の特定AI応用分野に向けられます。以前及び現行法律に従って様々な企業と研究機関がAI分野でも特許を出願し始めました。以下の図でも確認できるように、1960年代以後に約34万件の特許ファミリーが出願及び公開されました。また2018年半ばまで合計150万件以上の論文が発表されてAIが科学の主要分野に位置づけられたことが分かります。2000年代の頭までは論文(scientific publications)が大きく増加しましたが(2002~2007年の年平均成長率が18%でほぼ2倍増加)、特許出願が急増するまではさらに10年がかかりました(2012~2017年の年平均成長率28%)。基礎研究は主に科学論文で先に発表される反面、産業的活用に関するR&Dは相当な時間が所要されて、特性上特許出願に繋がるためであると解析できます。

▲最初掲示年度別のAI特許ファミリー/科学論文数推移(WIPO 2019)

以下の図を見ると、1990年代半ばから特定応用分野に対する特許出願が出てきています。主に交通及び通信分野であり、人工知能関連発明は色んな応用分野にかけて引き続き出願されています。

▲出願分野別の最も早い優先権年度に従う特許ファミリー数推移(WIPO 2019)

●AI基盤BMのためのIP保護戦略

AI基盤研究と革新には多くの投資が必要です。ヨーロッパ連合(EU)は2020年以後AIに年間で最初200億ユーロ投資を目標としています(ユーロ委員会2018)。世界知的財産機構(WIPO)によると、約3,000個以上のAI関連企業が460億ドル相当の資金を支援されていて、M&AはAI基盤技術、データアクセス及び関連特許ポートフォリオを確保する手段として位置づけられました。約500個の企業が合併されていて、その中の半分以上が2016年以後になされたものです。

AI技術及び応用分野に対する高い投資規模を考慮すると、このような投資を保護して収益を創出するために企業と投資家たちはAIアルゴリズムとコードに関する特許及び著作権のような公式のIP手段、AIデータに関する営業秘密のような非公式のIP手段を含めてAI関連知的財産を保護するために多様な戦略を使用しています。


また、③公開を通じた標準化(Public Domain)を基盤にする方法があります。しかしAI技術を開発する時には2つの主要課題があります。(a)技術的な側面でAIシステムとアルゴリズムを開発すること、(b)最適化したAIアルゴリズムまたはAIシステムを教育するために適合するデータセットにアクセスすることです。データセットに対するアクセスは、法的システム間の競争優位だけではなくスタートアップに投資する投資家たちにも重要な問題です。使用可能なデータセット、データの品質関連の費用などの問題があります。公共機関では予算の制約やデータの保護規定でデータアクセスがもっと難しい可能性があります。特に生命科学分野では規定がもっと厳しく、データにアクセスするのがもっと難しい可能性があります。

つまり、企業はAI分野のR&Dで標準化された公開ソースを活用して開発速度を高めながらデータセットを収集/拡張して、公式/非公式のIP保護戦略を同時に使用して競争優位を確保することができます。

●示唆点

AI基盤のBMで公式/非公式の保護戦略が相互補完的に必要であるという様々な研究があります。現行制度は主にAIをソフトウェアにみなしてAIアルゴリズムを適用した特許登録基準を明確に規定しているため、AI基盤方法(methods)とシステムを特許として保護することと関連して相変わらず法的、実用的、倫理的課題が残っています。

企業はAI技術の発展が加速化し、以前より早い対応が必要になっています。特に資金調達や直接投資において公共寄与(例:特定データセット及び/または特定AIアルゴリズムに対するアクセス権限)と価値創出(例:特定データセットの所有権/アクセス権限の収益化)をどう扱うかの戦略を立てるのにとても重要な前提になっています。シリコンバレーに本社を置くアメリカの民間ベンチャーキャピタル企業のAndreessen Horowitは、大手企業がAIに多くの投資を行っているため、スタートアップは1.スマートで野心のあるチーム保有、2.大手企業が持っていない固有のデータセットに対するアクセス、3.AIに過度に依存しないことで差別化するべきだと提案します。

AI技術は既に都市生活に影響を及ぼし始めていて、スタンフォード100年人工知能研究(Stanford 100 Year Study on Artificial Intelligence)によると、AIは知的資本所有権を強化しながら人間の認知的な職に挑戦できると予測しています。なので、AI基盤BMの革新と知的財産保護戦略の結合は相変わらず重要でありますが、AI技術の公定性に対する大衆の認識と革新家の独占欲求の間で均衡を保つのが最も重要です。

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1. 上記内容全体は、Patent management; Protecting Intellectual Property and Innovation 2021, Oliber Gassmann, Martin A. Bader, Mark James Thompson, Springerから抜粋しています。
   

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