2019年9月20日金曜日

【IP NOTE】特許権と企業の外部資金調達

特許企業外部資金調達1


企業運営において最も重要なことの一つは、外部資金を調達することです。もちろん元々保有していた資金で研究開発や製品生産を行う場合もありますが、大手企業でない限り容易いことではないです。特に、スタートアップやベンチャー企業は外部から投資をもらったり貸出を通じて経営に必要な資金を設ける場合がほとんどです。

特許権はこのような状況で外部資金の調達をより円滑にできる要素になりえます。特許権は登録できた技術を最もうまく説明している文書の一つで、これを基に企業が保有している技術と競争力を計ることができるためです。今回は、特許権と外部資金調達との関係について少し詳しく調べてみたいと思います。

▲ pixabay.com

特許権が外部資金調達に肯定的な影響を及ぼす理由


外部資金を調達するためには、企業の競争力をアピールすることが重要です。しかしスタートアップや技術基盤の企業はその水準と価値を判断することが難しく、外部に広く知られる場合も稀であるため、外部機関や投資家などから企業の価値を把握することは難しいです。そのため、企業の価値を調べるために別途調査が必要となりますが、それも簡単ではなく費用も発生します。

特許権は出願以後に特別な事情が無ければ一般に公開されるので、外部の投資家が企業に関する別途の調査をしなくても公開された特許権を通じて企業のR&D方向、研究結果などをある程度把握することができます。これは特許権が企業の価値を評価するためのいい基準点になりえることを意味します。

そして特許権の明細書には登録された技術に関して詳しく説明されていて技術に関する把握が比較的容易く、国から承認した文献で権利であるため、情報に対する信頼性も高いです。また、特許権として登録されるためには既存の技術より新しいか進歩された技術である必要があるため、特許権を保有しているという事実を通じて企業が持つR&Dの力量を計ることができます。従って、外部の投資家や貸出機関は特許権を通じて企業の価値を把握できて、企業では価値をアピールしながら外部の資金をより容易に調達することができます。

特許を通じた外部資金調達と外部要因間の関係


(1)企業の規模
前述した通り、ベンチャーやスタートアップのような中小企業は外部から企業に関する情報を知り難いので、技術に関して詳しく説明されていて一般に公開されている特許権は企業の価値を計る重要な要素になります。一つの特許権でもその有無が資金を借りたり投資を留置する際に重要な役割になる可能性があります。

一方、中堅企業以上の規模を持つ企業はベンチャーのような中小企業に比べて企業情報に対する接近が易しいほうです。自社の製品や技術力を媒体の広告を通じて大衆に公開することもできて、ほとんどの国で上場された企業はオンライン公示システムを通じて情報を公開するようになっているので、誰もが企業の人員現況、財務諸表、R&D現況などに関して簡単に知ることができます。必ず特許権でなくても企業の情報を把握することができるので、外部投資家や貸出機関からは特許権有無が中小企業ほど重要な価値として認識されない可能性が高いです。

従って外部投資家からすると企業の規模が大きいほど特許権一個一個の価値は下がるので、企業の規模が小さいほど外部資金調達に特許権が与える影響が大きいといえます。また、技術の不確実性が高く、外部に品質を見せられる対案が少ない新生企業であるほど特許権を通じた資金調達で大きい利益を得ることができます。

▲ pixabay.com

(2)特許権の価値
特許に登録された技術がとても革新的で優れていれば特許の価値はとても高くなります。一般的に高い価値の特許権ならその分もっと大きい金額の外部資金を調達できるだろうと考えられます。

しかし学者たちの研究によれば、特許の価値は外部の資金調達に大きく影響を及ぼさないそうです。これは特許価値を計れる引用数値と中小企業の資金制約緩和間の関係を研究した結果ですが、外部資金調達に肯定的な影響を与える範囲の特許権を確認した結果、引用数値が高い特許はほぼ無いことが分かりました。

考えてみれば、価値が高い特許であっても外部機関や投資家はそこから得られる追加的な利益に対して明確に判断することは難しいので、特許権の価値よりは特許権を保有しているという事実や特許出願事実が実質的に外部の資金調達に肯定的な影響を及ぼすことだと推定できます。スタートアップや新生企業の立場から高い価値を持つ特許権一つよりは、相対的に平凡な多数の特許権がむしろ役に立つかも知れないということです。

(3)企業の分野
全ての分野において特許権が重要な役割を果たすとは言いにくいです。技術の一つが大きい変化をもたらせるICT分野の企業と技術の重要性が相対的に低いその他のサービス業を比較すると、どの分野で特許権が重要なのかは自明なことです。これと関連する研究結果もまた非情報通信分野に比べて情報通信分野において特許権を通じた外部資金調達がもっと多く発生したことを見せていました。つまり、技術の重要性が高い分野であるほど特許権が投資家たちにもっと肯定的な要素として作用するものと思われます。

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1. 'Patent as Quality Signals? The Implications for Financing Constraints on R&D'から要約及び抜粋


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