2018年8月28日火曜日

特許訴訟が企業のR&Dに及ぼす影響

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1. 特許訴訟と企業

特許制度の究極的な目的は、特許技術の公開を通じて産業の発展に資することです。しかし、実際には、企業が発明した技術の保護のために特許制度が利用されるのが一般的です。特許として登録された技術の独占権は、究極的な目的達成のために随伴される付加的な効果ですが、実質的に企業(出願人)に及ぼす影響はとても大きいです。特許技術の独占によって各企業間で特許技術をめぐる多くの紛争が起きて、それらの紛争結果によって企業に大きい利益をもたらすことも、大きい損害を負わせることも可能です。

企業間で発生する特許をめぐる紛争は、ほとんど特許訴訟を通じて解決されます。対象特許の技術が認められて侵害との判決になることもあり、または特許として認められず非侵害との結末になることもあります。

敗訴した企業は莫大な金額を賠償しなければならず、また研究開発に投資する費用を訴訟に使用するため、その分技術力が低下することになります。一方勝訴した企業は、勝訴に伴う補償額など金銭的な利益のみならず、これを基に特許ポートフォリオを更に篤くし、競争力を上げる機会にすることもできます。

結局、特許訴訟は特許紛争の敗者と勝者の両方に影響を与えることになりますが、金銭的な部分のみならず企業のR&Dにも影響を及ぼすことになります。

ここでは、特許訴訟が企業のR&Dに及ぼす影響についてより詳しく調べてみたいと思います。


▲ flickr.com ⓒ Missy Schmidt


2. 特許訴訟が企業R&Dに及ぼす影響

(1) 訴訟によるR&D収益率低下

企業にとって特許訴訟に漏出するのは、色んな理由でR&Dに否定的な影響を及ぼしえます。最も直観的な影響は、特許訴訟がR&D投資に対する収益を低めるということです。特許訴訟に関与することはとても大きい費用を招く可能性があるため(Bessen and Meurer, 2013)、企業はある投資(R&Dなどのプロジェクト)を決定する時に特許訴訟の危険を考慮します。つまり、いい投資機会だとしても特許訴訟の危険が高い状況に置かれていれば、企業はこの機会を放棄する可能性があります。
特許訴訟に漏出した企業は、このような危険を避けるためにもっと安全な技術に投資することになり、これは高い収益は得られるが危険性が高い技術に対する投資を遠ざける結果をもたらします。


(2) 訴訟による財政悪化

特許訴訟はその勝敗と関係なく、少なくない金額を必要とします。企業の立場からすると、この特許訴訟費用の増加はR&D投資額減少に繋がる可能性があります。
訴訟に漏出すると企業資金が狡猾するかもしれないという考えは、過去の研究及びいくつかの実際の事例で見られる証拠によって裏付けられます。特許訴訟が熾烈な分野の企業は特許ライセンス合意のために大規模の合意金や超過支給をする可能性が高いです。これは、企業が法的紛争が特許裁判所や最高裁判所に拡大することを避けたり否定的な結果を避けたがるために発生します。

また、企業は製品や技術開発において、潜在的な脅威をモニタリングしたり、特許訴訟の危険を最小化するために製品を修正するなどもっと多くの資金を投入せざるを得ない可能性があります。結局企業は特許訴訟及び特許訴訟回避のために少なくない資金を投入しなければならず、これはR&D投資額減少につながり得ます。



3. 特許訴訟敗訴による使用禁止命令が企業R&Dに及ぼす影響

一般的に特許訴訟の判決では、勝訴した者には特許技術維持と補償額が受けられるようにして、敗訴した者には損害額の賠償と該当技術・製品に対する使用禁止命令が下されます。敗訴した企業にとっては、特許侵害による被害額補償も打撃になりますが、侵害技術の使用禁止命令はもっと大きい危険になりえます。

もし禁止命令によって、特許権者のライセンスなしで該当技術を使用できなくなる場合、合意のために莫大なロイヤルティを支払わなければならない可能性があり、または回避のために製品及び技術を修正したり新しい技術を開発するためにもっと多くの金額を投資しなければならない可能性があります。このような一連の行為によって製品開発のためのR&Dに非効率的な投資をしなければならず、これはR&Dの成果創出に否定的影響を及ぼすことになります。


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1. 'Roadblock to Innovation: The Role of Patent Litigation in Corporate R&D', Filippo Mezzanotti(2017)から要約及び抜粋



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