2025年11月3日月曜日

【IP ISSUE】各国の最新情報_202510

 US

2025年10月11日、アメリカのコンピューター科学者のStephen Thaler氏が人工知能(AI)が生成した芸術作品の著作権を認めないアメリカ著作権局(USCO)の決定に関連し、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)の判決に対してアメリカ最高裁判所(The U.S. Supreme Court)に上告したとロイター(reuters)通信が報道しました。

▲ gettyimagesbank.com

Thaler氏はアメリカのミズーリ州セントチャールズに本社を置く高級人工神経網技術会社である「Imagination Engines Inc.」を設立し、AIシステム「DABUS(Device for the Autonomous Bootstrapping of Unified Sentience、以下DABUS)」を開発しました。

2018年にThaler氏は、DABUSが制作した視覚芸術作品について著作権登録を申請したものの、2022年にアメリカ著作権局(USCO)は、アメリカ著作権法に基づき著作物として認められるためには創作者が人間でなければならないと判断し、登録を拒否しました。

Thaler氏はアメリカ著作権局の決定に対し、アメリカD.C連邦地方裁判所(District Court for the District of Columbia)に提訴し、当該作品はDABUSによって自律的に創作されたものであり、その著作権はAIの所有者である自分に帰属すると主張しました。しかし、2023年3月18日、同裁判所は「著作権は機械によって創作された作品を保護することはできない」との判断を下しました。

これを受けて、Thaler氏はアメリカD.C連邦巡回控訴裁判所(Court of Appeals for the District of Columbia Circuit)に控訴しました。しかし2025年3月18日、同裁判所はアメリカ著作権局(USCO)の決定および下級審の判決を支持し、「人間以外の主体は著作権法上の“著作者”として認められない」という立場を改めて確認しました。

2025年10月10日、Thaler氏はDABUSが制作した芸術作品に対する著作権保護を拒否したアメリカ著作権局の決定について、「この判断はAIを創造的に活用しようとするすべての人々に萎縮効果をもたらし、クリエイティブ産業におけるAIの開発および利用に悪影響を及ぼす」と主張し、アメリカ連邦最高裁判所に上告しました。

2023年、Thaler氏はDABUSを唯一の発明者として指定した発明の特許登録を拒否したアメリカ特許商標庁(USPTO)の決定に対しても異議を申し立て、連邦最高裁判所に審理を求めましたが、最高裁はこの事件の審理を受理せず、USPTOの決定を支持した下級審の判断を確定させました。

USPTOは、アメリカ特許法上「発明者は人間でなければならない」という原則を理由に、当該発明の特許登録を拒否しました。これを受けて、アメリカバージニア州東部地方裁判所(District Court for the Eastern District of Virginia)は、USPTOの判断を支持する立場を確認しました。

Thaler氏は、「AIを発明者として認めることこそがイノベーションを促進する」と主張してアメリカ連邦巡回控訴裁判所(Federal Circuit Court of Appeals)に控訴しました。しかし、同裁判所はこの主張を「法文に基づかない推測であり、法解釈の範囲を逸脱するものである」と判断しました。

<出典>"アメリカのコンピューター科学者Stephen Thaler、アメリカ最高裁判所にAI創作物に対する著作権関連紛争上告”. 韓国知識財産研究院.

WIPO

2025年9月1日、世界知的財産機構(WIPO)は2025年グローバル革新指数(GII)発表に先立ち、「2025年世界100大革新クラスター順位(Top 100 Innovation Clusters worldwide 2025)」を発表しました。

「革新クラスター」とは、革新を牽引する都市または地域を指し、国の革新システムを支える中核的な原動力となる存在です。

2025年の「世界100大革新クラスター」順位は①特許協力条約(PCT)に基づき公開された特許出願活動、②科学論文の発表活動、③ベンチャーキャピタル(VC)活動(2025年に新設)の3つを分析し、世界中で発明者・科学分野の著者・ベンチャーキャピタリストの密度が最も高い地理的地域を特定したものです。
その詳細な結果は以下のとおりです。

革新クラスターTOP5
深圳-香港-広州(中国/香港) が1位、東京-横浜(日本)が2位、サンノゼ-サンフランシスコ(米国)が3位、北京(中国)が4位、ソウル(韓国)が5位となりました。
その中でも、深圳-香港-広州と東京-横浜を合わせると、世界全体のPCT出願の約5分の1を占めるそうです。


集中的な革新活動TOP5
100大革新クラスターの中で、人口密度に対して最も集中的(intensive)な革新活動を示したクラスターは、サンノゼ-サンフランシスコ(米国)が1位、ケンブリッジ(英国)が2位、ボストン-ケンブリッジ(米国)が3位、オックスフォード(英国)が5位となりました。

国TOP5
100大革新クラスターを最も多く保有した国は中国(24個)が1位、アメリカ(22個)が2位、ドイツ(7個)が3位、インド(4個)が4位、英国(4個)が5位を記録していて、中国は2年連続1位となりました。

<出典>“世界知的財産機構、2025年100大革新クラスター順位発表”. 韓国知識財産研究院.
https://www.kiip.re.kr/board/trend/view.do?bd_gb=trend&bd_cd=1&bd_item=0&po_item_gb=IORG&po_no=23887, (参照 2025-11-03)


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2025年10月30日木曜日

【IP ISSUE】OTTストリーミングに隠された特許技術たち

現代を生きる多くの人々は、少なくともひとつのOTTサービスを利用していると思います。実際、近年ではOTTサービスの視聴時間が継続的に増加する一方で、テレビの視聴時間は徐々に減少しており、コンテンツの消費スタイルそのものが大きく変化していることが分かります。ある調査によると、10人中の8人がOTTを利用しているとのことで、ストリーミングサービスはもはや私たちの日常にしっかりと根づいた存在と言えるでしょう。

▲OTTサービス画面 〈出処:gettyimagesbank.com〉

最近では、多くの映画やシリーズ作品がテレビや映画館よりも先に、あるいは独占的にOTTサービスで公開されるケースが増えています。
このようにOTTプラットフォームがコンテンツの消費者と提供者の間で中心的な役割を担うようになった理由としては、どこにいても高品質なコンテンツを楽しめること、そして個人の好みに合わせたレコメンド機能の便利さが大きいと言えるでしょう。

そんな便利なOTTサービスが、実は数えきれないほどの特許技術によって支えられた「特許のかたまり」であることをご存じでしょうか。
実際に代表的なOTTブランドである「Netflix(ネットフリックス)」は、世界でおよそ2,000件もの特許を出願している「特許モンスター」として知られています。

今回は、OTTストリーミングを構成するさまざまな特許技術を通して、私たちが普段何気なく利用しているOTTの裏に隠されたテクノロジーを一緒に見ていきたいと思います。

「最近のトレーラー映像は、みんな“こう”作っているんです。」

近年、多くのOTTサービスでは、新作コンテンツの発表時に本編の一部を活用した「トレーラー」映像を積極的に制作・公開する傾向が見られます。
かつてはトレーラーを1本作るために、制作者が本編の中から使いたいシーンを一つひとつ探し出し、手作業で編集する必要がありました。
しかし、この方法は膨大な作業負担がかかり、現在の制作環境にはそぐわない非効率的な作業だったのです。

▲ネットフリックス「トリガー」公式トレーラー
〈出処:Netflix公式Youtube〉


多様なコンテンツを提供するOTTの特性上、毎年数十本から数百本におよぶ作品を配信しなければならないNetflixは、制作プロセスの効率化が大きな課題となっていました。そこでNetflixは、従来の方法の限界を機械学習アルゴリズムと自動化によって解決する道を選びました。

トレーラー制作に関する一種の公式を構築し、それを機械学習によって学習させたうえで、アップロード予定のコンテンツから最も効果的なシーンを自動的に選び出し、トレーラーを生成するシステムを開発しました。

▲Wipsglobal.com、US 12374372、「Automatic trailer detection in multimedia content

このアルゴリズムは、各メディアアイテムからビデオショットを抽出・分析し、それぞれのショット間の相対的な類似度をスコア化して、主要なシーンを一つにまとめることでトレーラーを生成する仕組みです。
つまり、人の手で行っていた作業を機械が代わりに行うことで、従来に比べて時間と労力を大幅に削減し、制作リソースをより効率的に活用できるようになったのです。

このような技術は、近年のOTT業界で次々と新しいコンテンツを制作・公開することが当たり前になっている状況を考えると、非常に重要な意味を持ちます。
自動化されたトレーラー制作技術は、常に新しいコンテンツを求めるユーザーのニーズを的確に捉え、その戦略効果を最大化する強力な武器であり、同時に競合他社への牽制手段でもあると言えるでしょう。

???:視聴履歴をビッグデータで分析して、あなたの「心」を読んでみました。


かつて、「YouTube Algorithm brought me here(YouTubeのアルゴリズムが私をここに連れてきた)」というコメントが流行したことがありました。
このコメントは、「なぜこの動画がおすすめに出てきたのかは分からないけれど、面白いからまあいいか」というニュアンスを持つ、いわば冗談めいた「ミーム」の一種でした。

▲Youtubeの推奨アルゴリズム関連インターネットミーム
〈出処:Reddit- r/PewdiepieSubmissions〉


YouTubeは、昔から「面白いけれど、なぜこれをおすすめされたのか分からない」動画を勧めてくることで有名でした。そのため、人々はYouTubeのアルゴリズムを不思議に感じつつも、一種のユーモアとして楽しむ文化が自然と生まれたのです。しかし、こうした「正体不明のおすすめ」さえも、実はGoogleの緻密なアルゴリズムが、ユーザー自身も気づいていなかった隠れた好みを見抜いた結果だと言えるでしょう。では、どうしてアルゴリズムは私たち自身さえ知らなかった「好み」を、ここまで正確に見抜くことができるのでしょうか?

その秘密を解き明かす鍵は、Googleが2013年に出願した「動画の同時発生統計に基づく動画推薦」に関する特許にあります。
これは、現在のYouTubeアルゴリズムを支える最も重要な中核技術のひとつです。

▲AI Summary、US8868481、「Video recommendation based on video co-occurrence statistics」

このシステムは、ユーザーが視聴中の動画と、推薦リストに表示される他の動画との関連データを分析し、ユーザーの行動パターン(どの動画をクリックしたのか、どのくらいの時間視聴したのか など)を基に、最適化された新しいおすすめリストを提示する仕組みになっています。

▲Drawing、US8868481、「Video recommendation based on video co-occurrence statistics」


つまり、「なぜこの動画がおすすめに出てきたのか分からない」と感じる動画も、実は以前に視聴したコンテンツと何らかの関連性があったり、これまでの視聴パターンをもとに「きっと気に入るだろう」と判断して推薦されているのです。
一見すると突拍子もなく見える「謎の動画」たちも、実は恐ろしいほどの分析力を持つYouTubeアルゴリズムによって計算された結果だったと考えると、YouTubeの緻密な分析力が少し怖く感じられてきます。

こんにちは~!映画館レベルのオーディオです!私がOTTを救いました!

映像や音響のコーデックでその名前をよく目にする「ドルビー・ラボラトリーズ(Dolby Laboratories)」は、さまざまな映像・音声規格を開発してきたことで知られています。
映画業界では、このドルビーの規格がまるで「聖書」のように扱われるほど重要な存在なのです。

▲Dolby Atmosロゴ
〈出処:Dolby〉

その中でも、ドルビーを代表する音響技術である「Dolby Atmos(ドルビーアトモス)」は、「臨場感あふれる没入型サウンド」をコンセプトとした最新のオブジェクトベース・サラウンド音響技術です。
従来のサラウンドをさらに進化させ、スクリーン上の物体と劇場内の音響を1対1でリンクさせる仕組みを採用した、映画館向けの音響技術かつシネマ規格でもあります。

▲Dolby Atmosシステムの適用例示
〈出処:Dolby Professional〉

従来のサラウンドよりも多くのスピーカーを360度あらゆる方向に設置する必要があり、さらに音の反射まで考慮して空間設計を行わなければならなかったため、大型シネコンの中でもごく一部の劇場でしか導入できない規格として知られていました。
しかし、Dolby Atmosは仮想空間内で音の位置を正確に解析し、その位置に対応するスピーカーへ音を出力するという原理上、多くの制約がありました。そのため、PCやスマートフォン、さらにはホームシアターでの再現は事実上不可能とまで言われていたほど、非常にハードルの高い技術でした。

▲Wipsglobal.com、EP3434023、「Near-Field rendering of immersive audio content in portable computers and devices」


しかしドルビーは、この技術を「仮想化」することで、一般的なステレオスピーカーなどの身近なデバイスでもDolby Atmosの環境をそのまま再現できるようにして
、現在ではAtmos技術が広く利用されるようになったのです。そして、こうした実現を可能にした背景には、ドルビーが2016年に出願した特許の存在が大きく貢献しています。

その特許とは、「携帯型コンピューターおよびデバイスにおける没入型オーディオコンテンツのフィールドレンダリング」に関するもので、通称「Near Field(ニアフィールド)」特許と呼ばれています。
この技術は、完璧なサラウンド環境が整っていなくても、ステレオスピーカーを通じて機械的に調整されたサウンドを出力し、Dolby Atmosを仮想的に再現するというものです。つまり、音の周波数や音量を精密に制御することで、ステレオスピーカーでも立体感のある“仮想サラウンド”を実現する技術なのです。

この技術のおかげで、スマートフォンやPCでも現場感あふれるサウンドを楽しむことができるようになり、現在主流となっているOTTプラットフォームもその恩恵を受けることになりました。OTTサービス各社は、自社コンテンツの品質向上を目的として、プラットフォームレベルでDolby Atmos機能を積極的に採用するようになり、その結果、OTTと従来のメディアとの間にあった没入感の差を大きく縮めることに成功しました。まさに市場の流れを一変させた画期的な技術と言えるでしょう。

総合コンテンツプラットフォームへ進化するOTT、その発展はどこまで続くのか?


▲国際ストリーミングフェスティヴァルポスター
〈出処:国際ストリーミングフェスティヴァル公式サイト〉

ここまで、OTTストリーミングに隠された核心技術を特許を通して見てきました。
近年、OTTの領域は映画やドラマといった従来の枠を超え、スポーツやeスポーツなど多様な分野へと拡大し、私たちのコンテンツ消費のあり方を大きく変えつつあります。
最近では、今年開催された「国際ストリーミングフェスティバル」にも大きな注目が集まって、OTTの価値は今後ますます高まっていくことでしょう。
単なる映像プラットフォームから、多彩なコンテンツを提供する「総合コンテンツプラットフォーム」へと進化を遂げつつあるOTTが、これからどのような技術と融合し、どんな華麗な変身を遂げるのか、その行方に注目が集まっています。


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2025年10月29日水曜日

【WIPS Global】複雑な特許文献も、もう核心だけ見える!「ハイライト機能」

 特許文献を数多く確認する際、最大の課題は「いかに迅速に本質を把握するか」という点です。WIPS Globalが提供するハイライト機能は、文中に隠れた重要なキーワード目立たせ、必要な情報を一目で見つけ出すことを可能にします。複雑な技術文献でも要点だけを的確に把握できるため、審査・分析の効率が飛躍的に向上します。

では、なぜ特許レビューにおいてハイライト機能が欠かせないのでしょうか?

膨大な文献の中から「核心」を素早く把握
特許文献は数十から数百ページにも及ぶことが多く、技術的な表現も複雑です。ハイライト機能は重要なキーワードを視覚的に強調し、文献全体を最初から最後まで読まなくても核心部分をすぐに確認することができます。
これにより、レビュー時間の短縮 → 業務生産性の向上へと直結します。

分析品質の向上&見落とし防止
特許審査やレビューで最も危険なミスは、重要な用語やクレームを見落とすことです。ハイライト機能は指定したキーワードを文献全体で一貫して強調表示するため、確認漏れを防ぐことができます。さらに、類似した意味を持つキーワードを同じ色でグループ化できるため、概念的につながるアイデアを一目で把握することが可能です。

多様な実務状況に対応する柔軟性
特許調査、競合分析、特許マップ作成、ライセンス検討など、業務内容によって注目すべきキーワードは異なります。ハイライト機能は、入力ボックスの位置調整、カラーのON/OFF、複数ページやビューアとの連携などに対応しており、目的に合わせて柔軟に活用できます。
その結果、ユーザーは不要な情報に時間を取られることなく、重要な部分だけを効率的にチェックすることができます。

実務効率を「目に見えるかたち」で実感
ハイライト機能を活用すると、単に読むスピードが上がるだけではありません。
レポート作成や協働の際にも、重要なポイントがすでに可視化されているため、コミュニケーションがシンプルになり、手戻り作業を減らすことができます。
結果として、レビュー工程における時間とコストの削減、そしてより信頼性の高いアウトプットへとつながります。

ここからはこうした便利で効率的なWIPS Globalのハイライト機能を少しご紹介したいと思います。

▲ WIPS Globalのハイライト機能

▲50個のハイライト色を設定することができます。

▲ WIPS Globalのハイライト機能

横または縦モードに切り替えができて、表示ウィンドウの大きさも自由に調整できます。

▲ WIPS Globalのハイライト機能

また、位置させたいところに適切に動かしながら文献を 検討することができます。

▲ WIPS Globalのハイライト機能

最大10個までのキーワードを一つの入力ボックスに入力できて、同じ色で強調することができます。

▲ WIPS Globalのハイライト機能

技術別の核心キーワードをセット単位で保存できて、いつでも簡単に読み込むことができます。

▲ WIPS Globalのハイライト機能

ハイライトは詳細表示、イージービュアー、マイフォルダなど連携する機能で自動で連動し、ハイライト機能を使えるすべての機能において保存したキーワードセットを検討することができます。

ここまで、アップグレードされたWIPS Globalのハイライト機能についてご紹介いたしました。
ハイライト機能は、単なる補助ツールではなく、特許レビューのプロセスに革新的な変化をもたらすコア機能です。複雑なデータをシンプルにして作業時間を短縮し、ユーザーが本当に必要とする情報に集中できるよう設計されています。
これからの文献レビューは、もはや面倒な作業ではなく、迅速で明確なインサイトを導き出す出発点となるでしょう。
特許レビュー体験の新しい基準!WIPS Globalのハイライト機能を、ぜひ体感してみてください。


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2025年10月28日火曜日

【IP ISSUE】「未知の領域にもう一歩」月探査と特許

1969年7月20日、アポロ11号の月面着陸が成功し、ついに人類の長年の夢とされてきた「月への旅」が現実のものとなりました。
アポロ11号の宇宙飛行士たちのおかげで、人類は地球以外の天体に初めて足跡を残した唯一の地球生物となり、その偉業を称えて国連は2021年の総会で7月20日を「世界月の日(International Moon Day)」に制定しました。

人類が初めて月に足を踏み入れて以来、航空宇宙分野は目覚ましい発展を遂げてきました。近年では、有人月探査や月を火星探査の拠点として開拓する「アルテミス計画」が進行しており、月や宇宙への関心はこれまでにないほど高まっています。

今回のポストでは「世界月の日」にちなみ、月探査に関連するさまざまな技術についてご紹介します。

月の周回方法も特許になる?―NASAの宇宙飛行経路特許


▲Wipsglobal.com、US10696423、「Method for transferring a spacecraft from geosynchronous transfer orbit to lunar orbit」

▲SmartCloud、US10696423、「Method for transferring a spacecraft from geosynchronous transfer orbit to lunar orbit」

地球の軌道と月の周回軌道は互いに向かい合っており、宇宙船が地球から月の軌道へ移動することは非常に難しく、多くの燃料を必要とします。
しかし、NASAのこの特許によると、最適な飛行軌道と速度を計算することで、最小限の燃料で宇宙船を月の軌道へとスムーズに移行させることができるそうです。特に最近では、月の軌道上に宇宙ステーションを建設し、有人火星探査の拠点とする「ルナ・ゲートウェイ(Lunar Gateway)」プロジェクトが発表され、この技術の価値が更に注目を集めています。この技術を活用することで、より経済的な宇宙探査が可能になると期待されています。

韓国の月着陸船テストシステム


月着陸船が正常に作動するかどうかを確認するためには、多くのテストが必要です。特に、着陸船が月の表面や重力環境を考慮して正しく動作するかを検証するためには、月面や重力を再現できる施設とテストシステムが欠かせません。

▲Wipsglobal.com、KR10-2794347、「着陸船の性能テストのための月重力模擬システム」
▲Drawing Editor、KR10-2794347、「着陸船の性能テストのための月重力模擬システム」

韓国航空宇宙研究院(KARI)が発表したこの特許は、月着陸船の性能試験を行うために、月の重力や環境を模擬したシステムです。
着陸条件である距離や高さなどを各方向に自由に設定・拡張できるだけでなく、着陸船模型を吊り下げる可動式フレームも柔軟に調整できるため、探査機の移動方向を自在に変えながら、さまざまなシナリオで性能をテストできる点が大きな特徴です。自分たちの手で開発した月探査船を、自分で直接検証できるという点でも、非常に誇らしい技術だと言えるでしょう

未来のモビリティは、もはや地球だけを走らない?―現代自動車の月面車


近年、多くの自動車メーカーが「自動車」を超え、より多様な形の「モビリティ」を開発することで、「モビリティ企業」への転換を図る動きが広がっています。韓国の現代自動車もその一社であり、独自の技術力を生かして未来のモビリティに関する特許を出願し、大きな話題を呼びました。注目すべき点は、その特許が地球ではなく月で使用される車両、いわゆる「月面車(ルナ・モビリティ)」に関するものだという点です。

▲現代自動車グループの月探査用のハイブリッド車両
<出処:現代自動車グループ>

現代自動車が出願した特許によると、この月面車は4つの車輪がそれぞれ独立した脚に接続されており、自由自在に動くことができます。
各脚には関節が組み込まれており、坂道では前脚を折りたたみ、後脚を伸ばすことで安定した走行が可能です。さらに、車輪での走行が難しい地形では脚を使って歩くようにして進むこともできるなど、さまざまな環境の悪路に対応できるのが大きな特徴です。


▲Wipsglobal.com、US 2024-0351710、「Hybrid vehicle for use in lunar exploration」

▲Drawing Editor、US 2024-0351710、「Hybrid vehicle for use in lunar exploration

短い距離の悪路を走行する際には低い姿勢で、爬虫類の歩行に着想を得た動きを見せ、長距離を移動する際には哺乳類の歩行を参考にした動きをするなど、動物の歩行パターンを模倣した動作を再現できる点も大きな特徴です。さらに、深層強化学習技術を応用することで、状況に応じた歩行方式や移動速度、移動方向などを月面車自身が判断して最適化できるという点が、従来の月面車と大きく異なる革新的なポイントと言えるでしょう。

アルテミスの夢は実現できるのか?


▲アルテミス計画のロゴ
<出処:NASA、https://www.nasa.gov/gallery/artemis/>

人類は、1972年のアポロ17号の任務以降、およそ50年以上もの間、月に足を踏み入れることができませんでした。
このような状況の中で、現在世界が最も注目しているアルテミス・プロジェクトの実行は、人類が「月への帰還」を果たすだけでなく、火星に初めて足跡を残すための出発点でもあるという点で、大きな意味を持っていると言えるでしょう。
「月」という舞台を前に、各国が技術の競争を繰り広げている今、果たして再び月探査を成功させることができるのか、その行方に注目したいです。


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2025年8月22日金曜日

【WIPS Global】特許検索の新しい基準!50地域のFull-Text

グローバル市場で競争力のあるIP戦略は、正確で豊富な特許データから始まります。
日々進化する技術革新の時代に合わせて、皆さまにうれしいお知らせです。
WIPS Globalが既存の16地域に加え、新たに34地域を追加し、合計50地域にわたるFull-Text特許データのカバレッジを確保しました!

特許データのカバレッジ拡充、なぜ重要なのでしょうか?

  • 競争優位の確保:世界中の主要な技術トレンドや競合他社の特許動向を誰よりも早く把握し、市場での競争優位を確固たるものにできます。
  • リスクの最小化:潜在的な特許侵害リスクを事前に特定し、回避戦略を立てることで不必要な紛争を防止できます。
  • イノベーションの加速:広範なグローバル特許データから新たなアイデアを得て、研究開発の方向性を定め、革新的な技術開発を加速させることができます。
  • グローバル市場進出戦略:特定国の特許環境を綿密に分析することで、成功的な海外市場進出戦略を立てるために不可欠なインサイトを得られます。


50地域のFull-Textデータ、何が違うでしょうか?

  • 独歩のカバレッジ:主要な技術先進国はもちろん、急成長する新興国の特許データまで網羅する、世界最高水準のデータカバレッジを誇ります。
  • 正確で信頼できるデータ:各国の一次データに基づいた最新の特許情報を、最も迅速かつ正確に提供します。
  • 強力な検索・分析機能:膨大なデータを効果的に探索・分析できるWIPS Global独自の検索・分析機能と組み合わせ、より強力なインサイトを実現します。


拡張されたカバレッジによって可能になる核心業務とは何でしょうか?

  • 深層的な競合分析と技術動向の把握:主要な競合他社がどの技術分野に重点的に投資しているかを把握し、競合のR&D方向性や市場戦略を予測できます。
  • 強力な特許ポートフォリオの構築と管理:特定の技術分野における技術的な隙間を見つけ、先手を打って特許を出願することで、強固な特許ポートフォリオを構築できます。
  • 新規事業機会の発掘と市場進出戦略の策定:特定の国への市場進出を検討する際、その国の特許制度、主要な技術トレンド、競合他社の特許状況を分析し、成功的な市場参入戦略の策定に活用できます。

50地域のデータでもっと新しく革新的になったWIPS Globalを確認してみましょう!
※以下の画面はテストサーバーの画面になります。WIPS Globalのサービス反映は9月を予定しております。

◎既存の16地域Full-Textデータ:US, EP, PCT, CN, JP, KR, CA, AU, DE, GB, FR, IT, RU, IN, TW, NL

◎新しく追加された34地域のFull-Textデータ

▲ WIPS GlobalのField Search

▲ WIPS Globalの検索結果画面

▲ WIPS GlobalのPDF原文

今回の50地域Full-Textデータカバレッジ拡大は、単なる当社ソリューションの機能向上にとどまらず、特許実務者の皆さまの業務効率を最大化し、最終的には企業の成功に貢献できる強力なツールを提供するという意味を持ちます。
もはや限定的なデータのせいで重要な情報を見逃す心配はありません。
ぜひWIPS Globalと共にグローバル特許情報のパノラマを体験し、皆さまの特許業務に新たな地平を切り拓いてください。


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