グローバル電子業界が、再び特許紛争の渦中に入りつつあります。米国の特許管理型企業(NPE)である「LED Wafer Solutions」が、サムスン電子とソウル半導体を相手取り、LED技術に関する特許侵害訴訟を提起したためです。今回の訴訟は、単なる特許論争にとどまらず、次世代LED技術の主導権をめぐるグローバル企業間の戦略的な争いとして注目されています。
では、実際に何が起きているのか──今回はこの訴訟の背景について見ていきたいと思います。
訴訟の概要と核心背景
今回の訴訟は 2025年9月15日、米国テキサス東部地方裁判所に提訴されました。原告側は、サムスン電子およびソウル半導体が、自社の保有するLEDパッケージングおよび製造関連の主要特許を無断で使用したと主張しています。
問題となっている技術は、LEDチップの放熱効率を高めるパッケージ構造、金属配線層の構成、サファイアやセラミック基板の結合方式などとされており、いずれもLEDの性能や寿命を左右する重要な技術要素です。
ソウル半導体、「協力企業」から「被告」へ
今回の訴訟で特に注目される点は、ソウル半導体が被告として名指しされたことです。これまでソウル半導体は、サムスン電子にLED部品を供給する協力企業として、間接的な関係者としてのみ言及されてきました。しかし今回は、直接の被告として指定されたことで、訴訟の範囲が単なる部品供給関係を超え、技術設計段階にまで拡大したものと評価されています。
これは、単なるサプライチェーン上の問題ではなく、核心技術を担う主体同士の全面対決として解釈できます。
争点となった製品と技術
一方、LED Wafer Solutions は訴状の中で、サムスン電子の Galaxy S/Z/A シリーズのスマートフォンに搭載された LEDフラッシュモジュールが、自社の特許を侵害していると主張しました。該当モジュールの構造が、自社の特許請求項と同一または実質的に類似しており、これは単なる技術的類似ではなく、意図的な侵害に該当すると強調しています。
さらに原告側は、過去に技術を公開した後、サムスンとソウル半導体が類似構造を採用した点を挙げ、被告らは特許の存在を認識していながら侵害行為を継続したと主張しています。
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| ▲サムスンGalaxyカメラ/LEDフラッシュ部品 出処:サムスン電子、ko.ifix.com |
問題となった特許と戦略的な裁判地の選択
訴状に含まれる代表的な特許は、米国特許第 8,952,405号および第 9,786,822号で、いずれの特許も最近再審査証明書が発行されています。これは、米国特許庁が当該請求項の有効性を改めて確認したことを意味し、LED Wafer Solutions側の主張の信頼性を高める要因と評価されています。
一方、本件が提起されたテキサス東部地方裁判所は、特許訴訟が最も活発に行われる裁判所として知られています。陪審制度の運用や手続き上、特許権者に有利に働くとされることが多く、原告側が戦略的に管轄地を選択したとの分析も出ています。
では、今回の訴訟で争点となっている特許について見てみましょう。
US8952405 と US9786822 は、「発光ダイオードパッケージおよびその製造方法」に関する特許です。この技術は、LEDデバイスを効率的に製造するため、ウェーハ基板と発光素子を一体型パッケージとして構成するものです。
サムスン電子をはじめ、複数の家電メーカーが引用してきた技術であることも確認されています。
ソウル半導体とサムスン電子の対応はどうなるか。
ソウル半導体にとって今回の訴訟は相当な負担となり得ます。同社は独自の特許技術力と積極的な特許防衛戦略を武器に、世界各地で勝訴実績を積み上げてきました。しかし今回は「攻撃者」ではなく「被告」の立場に置かれたことで、防御ロジックを体系的に構築しなければならない状況です。これは今後のロイヤルティ交渉、技術修正、企業イメージなど、さまざまな側面で戦略に影響を及ぼす可能性が高いといえます。
サムスン電子にとっても軽視できない訴訟です。グローバルブランドとして強力な競争力と技術力を持つサムスン電子ですが、米国内での訴訟は国際的な信頼や企業イメージに直接的な影響を与える可能性があります。そのためサムスン電子は、大規模な法務チームと技術専門家を投入し、精緻な反論論理を提示するものと見られています。
今後の展望
今回の争いは、突き詰めれば「真の技術の主人は誰か」をめぐる法廷闘争だと言えます。LED Wafer Solutions は特許権の強化と損害賠償の合意獲得を目指し、サムスン電子とソウル半導体は技術の独自性と非侵害を立証するための防御戦を展開するものと見込まれています。
現在、訴訟は提起されたばかりの初期段階であり、今後は被告側による答弁書の提出、クレームコンストラクション(請求項解釈)手続、仲裁・和解の可能性検討などが順次進められる予定です。
一方、本件の結果は単なる勝敗にとどまらず、韓国の技術企業がグローバル市場でいかに技術主権を守っていくのかという重要な示唆を与えるものとして、大きな注目を集めています。
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