2023年8月14日月曜日

【IP NOTE】キューピッドの矢はどこに?Fifty Fiftyと「著作隣接権」

 「著作隣接権」

コンテンツ洪水の時代、コンテンツ制作者たちはもちろん彼らの権利と収入にも多くの関心が集まっています。
いつの間にか番組では作曲家、作詞家など創作者が出演すると彼らが所有している著作権に関して聞くのが通過儀礼になりました。
彼らが得る著作権の収益もまた、ネットを盛り上げる話題になったのです。
もう著作権はこの時代を生きていく人なら一回くらいは考えてみたことがある「大衆親和的なキーワード」になりました。

最近このような著作権と名前は似ているけど、少し不慣れな「著作隣接権」という権利が韓国で話題になりました。
「Cupid」という曲でデビューと同時にビルボードにチャートインした韓国の新人アイドル「Fifty Fify」の所属会社「アトラクト」、そして用役会社である「The Givers」の間で法的攻防が世間のイシューになったからです。
今回のポストでは、私たちには少し不慣れな権利である「著作隣接権」について調べてみたいと思います。

▲Clipartkorea.com

歌手と製作者にも著作物に対する権利がありますか?

正解はYES!作曲家と作詞家が作った音楽を歌う歌手、そしてその歌手のレコードを製作した製作者はすべて「著作隣接権」を持ちます。

"著作隣接権”とは?
著作隣接権とは、用語通り著作権に隣接する権利を言います。歌手と演奏者、俳優のような創作物を表現する人々、そして彼らを指揮する指揮者、監督などを総称する「実演者(Perfomers)」に与えられる権利です。
そしてこのような著作隣接権は実演者のみならずレコード製作者と放送事業者にも付与されます。

▲著作隣接権の具体的な権利 <出処:NAVERの文化体育観光部ポストの一部抜粋>

Fifty Fifty事件でみる著作隣接権

▶事件要約

韓国で多くの人気を得たFifty Fiftyの「Cupid」という曲は、スウェーデンの学生たち(原作者)が作曲した曲です。
以後、Fifty Fiftyの所属会社(アトラクト)のジョン・ホンジュン代表はこの学生たちに約9,000ドル(1,200万ウォン)を支払ってこの曲をバイアウトしました。
しかしCupidの著作権を所属会社ではなく用役会社のThe Giverが所有している事実が明らかになって色んな疑惑が提起されました。
それではこれに対する両サイドの主張を確認してみます。

ジョン・ホンジュン代表(所属会社アトラクト) “The Giver側がCupidの著作権購入に関する情報を提供しなかった”
このような所属会社の立場が出ると、本来は支払った曲の費用(約9,000ドル)に著作権購入料も含まれているのに、用役会社のThe Giversが協議せず著作権を横取りしたのではないかという疑惑が露わになっています。

アン・ソンイル代表(The Givers) “所属会社が約9,000ドルを支払って保有したのは著作物を創作した人が持つ「著作権」ではなく、レコード制作会社に付与される「著作隣接権」であり、The Giverは著作隣接権に対していかなる権利も持っていない”
また、The Giversは自社が所有する著作権は作曲家たち(スウェーデンの学生たち)との論議の末に適法な手続きを経て権利譲渡契約を締結して代金を支払って保有した正当な権利であると主張しました。合わせて著作権の適法な確保を立証する曲の費用ではなく「別途のインボイス」を保有しているとも抗弁しました。

▶なぜここまでイシューと問題になったのか?

現在アトラクトは「著作権」の代わりにレコード制作者が持てる「著作隣接権」だけ所有しています。
アトラクトが持っている著作隣接権は用役会社が適法な手続きで保有するようになった著作権とかなり似ているように見えます。
二つの内一つだけをもっていてもCupidに対する権利行使ができるはずですが、権利名と所有者を置いてなぜここまで熾烈な攻防が広げられるのでしょうか?

▲Clipartkorea.com


▶著作権VS著作隣接権の比較

著作隣接権は著作権と同じく、財産権と人格権に関する内容を含んでいます。
しかし著作権者が持つ財産権に属する「2次的著作物の作成権(著作物を基に再び翻訳、編曲などで作成された新しい著作物を作成する権利)」と人格権に該当する「公表権(公衆に公開するか否かを決定する権利)」は持てません。
また人格権は「実演者」だけに付与される権利でレコード制作者と放送事業者には該当しません。

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権利の存続期間においても著作権は「著作権者の生存期間+死後70年」まで維持されます。
しかし著作隣接権は実演した時から70年(実演者)、レコードを発売した時から70年(レコード制作者)、放送をした時から50年(放送事業者)間保護されます。これは著作権の保護期間より断然短い期間です。権利の程度においても著作隣接権者が持つ「報償金請求権など」は著作権者が持つ著作物の持ち分に対する総体的な権利に見たらないといえます。

つまり、行使できる権利範囲とこれを通じて得られる報償及び付加価値を考慮すると著作権が著作隣接権より広く大きい影響力を持っているといえるのです。これに両サイド共に2つの権利を取得できれば「誰が著作権を持っていくか」が重要な争点になると思います。

▶著作隣接権の未来

▲Clipartkorea.com

今回のポストでは著作隣接権について調べてみましたが、いかがでしたか?
文化と技術の発達で大量で多様なコンテンツが生産されていて、今回のFifty Fifty事件のように今後は著作権のみならず著作隣接権を囲む社会イシューと紛争も増加すると思われます。
一例として既に「レコード社の権利を認めるみたいに出版社にも著作隣接権を与えるべきではないか?」に関するイシューが前から論議されています。
最近には「元の歌手の声を利用したAIカーバー曲が元の歌手の著作隣接権を侵害するか?」に対する問題が社会のホットポテトになったこともあります。
色んな形に変化し発展する未来の著作隣接権の動きに注目です。


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