ここ何年間、アメリカと中国の大学たちが大学内の知的財産権(IP)を管理して商業化するための「大学技術移転事務所(TTO:Technology
Transfer Offices)を設立し始めました。
これらのTTOは、大学研究院、学生及び教授陣と企業間の媒介の役割も果たしていて、大学の技術革新を商業化することで大学の収益創出から学部生及び大学院生の就職機会を増やし、経済創出寄与の機能も果たしています。
今回のポストでは、アメリカと中国の大学で増えている大学技術移転事務所(TTO)の動向と成長現況について調べてみたいと思います。
▲ Clipartkorea.co.kr |
【アメリカ】
●アメリカ大学TTOの役割
アメリカ大学のTTOは主に大学で研究、開発される発明の全般的な育成と支援を担当します。
教授と学生たちの技術的な発明をTTOに提出するように誘導し、発明の分析と技術の市場価値と成熟度の水準を考慮して特許保護を申請するか否かも判断します。
また、TTOは発明家たちが技術移転過程での支援ももらえるように手助けする役割も果たします。TTOが発明家たちに十分な支援を提供するのは、その分該当発明が商業化するに値するほど価値があるためです。
●大学TTOの主要活動
TTOは知的財産権を管理して発明を予備評価し、特許出願基準を満たしているかの確認と商業的に価値があるのかを検討します。
以後TTOは発明品の特許保護を申請するか否かを決定します。
また、公開された発明品を評価してこのような発明品の市場準備状態と商業的潜在力をもっと詳しく調査します。
この過程を通じてTTOは技術ライセンシング契約を締結するかまたはスピンオフ企業を設立するかを決定します。
2.産学協力
既にアメリカの一部大学は産業及び企業研究部署を別途設けていて、たまにTTOと協力しています。
多くのTTOは革新的な技術の発見と雇用及び富の創出を引き出せる産業と大学間の協力構築と維持を担います。
ただ、成功的な産学協力を成すためには、産業と大学間でお互いの理解と目標、そして補完性も反映しなければいけません。
3.学術的な起業家精神
学術的な起業家精神は学生の起業家精神、技術、特性を育成することを目標とします。
これは学生たちの起業、創業成長を促すための努力でTTOでもこれを重要要素として扱っています。
TTOでは教育と訓練、研究などの力量開発のための財政的な支援や資源を提供するなどの活動を広げています。
4.概念検証(PoC)資金誘致
PoCとは、新しいプロジェクトが実現可能性があるか、効果と効用を検証する過程を言います。
TTOはこのPoC検証とこれに必要な資金誘致役割も果たします。
検証にはNASAで開発した技術成熟度水準(Technology Readiness Levels, TRL)を基盤に発明家の提案を評価します。
評価で反映された結果は資金の規模を推定して資金誘致と活用計画に反映されます。
TTOは、TTO内部のみならず大学のIP政策も管理できます。アメリカのTTOでは参与契約、公開及び検討、発明(学生発明を含む)、発明返還などと関連する法律問題を包括的に扱う知的財産権政策を樹立するのが一般的です。
【中国】
●中国のIP発展現況
中国は公式知的財産(IP)法が1980年代に始めて採択された以後、徐々に発展してきました。
以後、中国内のIP法、IPに対する社会的な認識も高まっていてほとんどの中国大学は中国政府の支援の下でIPを所有していて、収益創出のための権限も持っています。
特に2002年、中国は大学に政府資金支援を通じてIPに関する相当数の権限を保有するようになり、その時から中国大学から提出された特許出願件数も急激に増加しました。
2016年から2020年まで中国の大学たちは中国の国家知的財産庁から発行された合計特許承認の内、568,825個の特許承認を受けました。
これは中国の大学で知的財産(IP)に対する理解と評価が高まって中国文化内でも知的財産(IP)概念に対する受容が大きくなったためです。
特に浙江大学(Zhejiang University)、清华大学(Tsinghua University)など中国の名門大学はIP管理と事業化のを成して大学の自体的力量はもちろん、中国のIPと発明価値向上にも寄与しています。
▲2016年~2020年の中国主要大学の特許許可統計(出処:World Patent Information 68) |
●中国最高大学のTTO:清华大学(Tsinghua University)
清華大学は中国最高の名門大です。それに相応しく、大学技術移転と技術革新分野でも最高の成果を出している大学でもあります。清華大学は2003年9月に内部IP資産管理機構である清華ホールディングス(Tsinghua Holdings)を設立しました。
以後研究技術の事業化のための子会社に発展し、現在は技術移転、IP管理、清華大学と大手企業間の協力、起業家精神及び技術戦略計画などの業務を主に遂行しています。
清華ホールディングスはこれまで56個の国技術革新と62個の核心技術開発を商用化していて3つの国家科学技術プロジェクトを商用化するのに寄与しました。また清華大学のTTOは、2016年ロイヤルティ及びスタートアップ収益でR&Dに6.95%を投資して中国上位500個の企業の内、6位を記録しました。現在も清華大学と企業たちに対するアドバイスを提供して中国の未来のリーダーシップを育成しようとしています。
▲中国の清華大学(出処: 清華大学ホームページ, https://www.tsinghua.edu.cn) |
【結論】
今回のポストを通じて、アメリカと中国で大学を中心に活発に行われている技術移転とTTOの成長が国のIP産業の発展に直結することを確認できました。これまで大学TTOは専門技術人員が十分ではなく学術的に有意味な価値を持つIPを事業化するのに戸惑っていました。
しかし、今のTTOは国の主導の下で大学と政府、産業と協力して技術を発展させるために資金も誘致して研究者たちのアイディアを商品化するための経済的な支援と道具も提供しています。
このようにアメリカと中国の大学技術移転の活性化とTTOが成長した背景にはIP管理と技術移転を積極的に奨励する両国政府の立法フレーム、政策と密接しているといえます。
今後、日本と韓国も大学技術移転を奨励できる政策的な基盤が設けられ、大学、産業間の積極的な協力を通じて技術移転と関連技術共有ももっと増えることを期待します!
<資料出処>
www.elsevier.com
– World Patent Information 68 (2022)
“An overview on patenting trends and
technology commercialization practices in the university technology transfer
offices in USA and China”
Japan Tel: +82-2-726-1113, 1107 | Fax: +82-2-777-7334 | wips-jp@wips.co.kr
0 件のコメント:
コメントを投稿