2026年2月5日木曜日

【IP KOREA】捨てられた土か海の宝に!マッドの大変身


韓国では毎年7~8月になると、忠清南道・保寧(ボリョン)地域でマッドフェスティバルが開催されます。夏のバカンスシーズンが始まると、決して外せない代表的なお祭りのひとつです。外国人観光客が韓国の干潟文化を体験するためにこのフェスティバルを訪れる光景は、教科書にも取り上げられるほど有名です。


干潟? NO、NO。今は“マッド”の時代!

かつて干潟は、「足を取られるだけの役に立たない土地」や「活用しづらい中途半端な地帯」と見なされ、長い間、大規模な干拓や埋め立て事業の対象となって次第に姿を消していきました。しかし21世紀に入ってから、干潟は多様な生物が生息する「生態系の宝庫」として再評価され、大きな転換点を迎えることになります。

▲Wipsglobal.com>SmartCloud マッド活用特許分析

特に、干潟のマッドに含まれるさまざまな成分が健康に大きく寄与することが明らかになるにつれ、その経済的価値も年々高まっています。今や干潟は、生態学的な重要性にとどまらず、産業的な可能性まで注目される天然資源へと成長したと言っても過言ではないでしょう。
今回のポストでは、こうしたマッドの華やかな変貌に焦点を当て、マッドを活用したさまざまな技術について詳しく見ていきます。

土ベッドよりもいい?マッドベッド

かつて韓国では、健康に良いとされる理由から「土ベッド」が大きな注目を集めた時期がありました。その背景には、オンドル(韓国式床暖房)の原理を応用した構造があります。電熱線によって温められた土製パネルが、オンドルのようにゆっくりと冷めながら熱を放出する過程で、土に含まれる遠赤外線が徐々に放射され、体に伝わるという仕組みが健康に良いとされてきたのです。

実は、マッドは土よりも粒子がはるかに細かく、熱を長く保持しやすいという特性があります。また、遠赤外線の放射量も土より高いため、優れた土ベッド用素材となり得るものでした。しかし、マッドの多くは干潟から採取されるため、塩分やさまざまな不純物が混在しており、純度の高いマッドパネルを得ることは容易ではありませんでした。

こうした課題を解決するため、良質なマッドの産地として知られる保寧(ボリョン)市と、清雲(チョンウン)大学の研究チームは、マッドに含まれる不純物を可能な限り除去し、高純度のマッドパネルを製造するための研究に力を注いできました。長年にわたる試行錯誤の末に開発されたマッドパネルの製造方法は、以下の通りです。

▲Wipsglobal.com、KR10-2013-0011454、「マッド板材およびその製造方法

まず、マッドを淡水で何度も洗浄し、塩分をできる限り除去することで、マッドの純度を高めます。その後、粉砕機やふるいを用いてさまざまな不純物を物理的に取り除き、精製されたマッドを得ます。こうして精製されたマッドは、最後に淡水とともに大きな容器に入れられます

精製したマッドを再び淡水と混ぜて容器に入れる理由は、純粋な成分のマッドを抽出するためです。容器に入れられたマッド液は、時間が経つにつれて密度の違いにより、淡水とマッドが分離する現象が起こります。この際、淡水よりも密度の高いマッドは自然と容器の底に沈殿し、こうして沈殿したマッドのみを取り出すことで、異物や粒子の粗いマッドが取り除かれた高純度のマッドを得ることができます。そのため、この工程は最も重要なプロセスの一つだと言えるでしょう。

この工程によって抽出された高純度マッドは、天然素材を加えたうえで黄麻布(ジュート)とともに成形され、さらにコーティング剤を塗布してパネル状に仕上げられます。完成したマッドパネルは、優れた断熱性を活かして建築用仕上げ材として使用されるほか、主にマッドベッドの床用マットレスとして活用されています。

マッド抽出物化粧品

マッドには、ミネラルをはじめとする肌に有益な成分が豊富に含まれており、美肌効果や老廃物の除去、水分バランスの調整など、さまざまな効果が期待できる素材です。こうした理由から、ミネラル成分を豊富に含むマッドは、近年、多くの化粧品において天然由来の添加成分として幅広く活用されています。

このような流れを受けて、干潟が広く、マッドの品質の高さで知られる保寧(ボリョン)では、早くからボリョンマッドの優れた特性に着目し、マッド抽出物の抽出方法や、それを活用した美白化粧品の製造技術に至るまで、独自に研究・開発を進めてきました。

▲Wipsglobal.com、KR10-2010-0090533、
「ボリョン産マッド抽出物の抽出方法及びその抽出物を含有する美白機能性化粧量組成物

本技術は、マッド抽出物を活用して美白機能性化粧品を製造する特許であり、保寧(ボリョン)市と清雲(チョンウン)大学が共同で研究した成果です。特徴的なのは、本特許が図面を伴わず、請求項の記載のみで構成されている点にあります。
説明によれば、マッドを精製する際には、精製水と混合する工程を5回以上繰り返す必要があり、各工程ごとに重量比を厳密に管理しなければ、化粧品用途に適した品質の抽出物を得ることができないとされています。この点からも、本特許が決して単純な内容ではないことがうかがえます

海の力を宿した癒やしのマッド

ウェルネス(Wellness)が注目される流れの中で、新たな分野として関心を集めているのが「海洋療法(マリンヒーリング)」です。海洋療法とは、干潟、海水、海藻、海洋性気候など、さまざまな海洋由来の天然資源を活用し、身体的・精神的な健康の向上を図る取り組みを指します。三方を海に囲まれた韓国のような環境は、海洋療法において非常に適した条件を備えていると言えるでしょう。

こうした海洋療法に活用されるさまざまな海洋資源の中でも、最も代表的な存在として挙げられるのがマッドです。マッドには、自然由来のミネラルや多様な有効成分が含まれており、肌の鎮静、デトックス、保湿など、健康と美容の両面に効果が期待できる素材として注目されています。
一方で、自然状態で採取されたマッドには、重金属や有害菌などが混在している可能性が高いため、必ず精製工程を経て、不純物を除去した純度の高いマッドへと加工する必要があります。こうした背景のもと、韓国海洋科学技術院では、海洋療法に適した高品質マッドを生産するための製造工程技術を開発し、特許として出願しました。

▲Wipsglobal.com、KR10-2529986、
海洋治癒用マッドおよびその製造方法(沈降タンク構造図)」

本技術の核心は、「沈降タンク」を活用した精製方式にあります。この工程を用いることで、従来の方法では分離が難しかった粒径50マイクロメートル未満の微細粒子を持つ高純度マッドを、効率的に分離・抽出することが可能となります。こうして精製された高純度マッドは、乾燥や粉末化といった再加工が施され、海洋療法用途として利用されるだけでなく、機能性化粧品の原料としても使用できるなど、幅広い分野での活用が期待されています。

これまで廃棄されてきた土が、海の恵みとして新たな価値を持つ“宝”へと生まれ変わった――今回は、そんなマッドに関する技術の数々をご紹介しました。韓国の保寧マッドフェスティバルは、夏に決して外せないイベントのひとつです。皆さんも一度、参加してみてはいかがでしょうか。

▲ gettyimagesbank.com <マッドフェスティバル>


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