【WIPSTUDY】最近10年間アメリカに出願されたAAA等級特許は?
特許検索・分析サービスであるWIPS Globalでは、アメリカ、韓国、ヨーロッパの有効登録特許に対する評価等級を確認することができます。
この特許評価等級は、韓国の発明振興会の特許評価システム(Smart3)で提供しているもので、最も高い等級であるAAAからCまで合計9つの等級に分かれています。
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▲Wipsglobal.com WIPS Globalの特許検索「特許評価等級」 |
特許評価等級は、IP技術金融、M&A特許の実査、特許技術取引、競合他社分析など様々な場面で活用されています。
今回のWIPSTUDYでは、最近10年間にアメリカで出願された特許で、AAA評価等級を獲得した特許を調べてみたいと思います。
※分析日時点で直近10年間にアメリカに出願されたAAA等級現況を元に作成
1. 年度別出願現況
1. 年度別出願現況
先ず、年度別出願現況です。
AAA等級特許は2010年から毎年延び続けて、2014年から減少気味を見せています。
4G LTE技術の適用時期である2010年から2014年までインテル(Intel)とクアルコム(Qualcomm)、マイクロソフト(Microsoft)のAAA等級特許が多く出願された影響で数値が高いことを確認できます。
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▲ 年度別のAAA等級特許出願現況 |
2. 出願人別の出願現況
出願人別の現況を見てみるとクアルコムが1位、インテルが2位、エチコン(Ethicon)が3位でした。
出願人別の現況を見てみるとクアルコムが1位、インテルが2位、エチコン(Ethicon)が3位でした。
上位10個の企業のAAA等級保有比率は全体の18%を占めています。
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▲ 上位出願人現況 |
1985年に設立されたクアルコムは、デジタル無線通信とサービスを開発して提供する企業です。
2世代移動通信技術であるCDMA(コード分割多重接続方式)に対する特許を保有していて、以後CDMA2000、3世代WCDMA技術、LTE技術標準を開発するなど関連分野で莫大な影響力を持っています。
クアルコムのCDMA技術は韓国電子通信研究院(ETRI)が開発にかなり助力したと知られています。こんな訳で1996年1月韓国が世界で初めてCDMAサービスが可能になったことがあります。
クアルコムはこのような標準特許を元に多くの収益を得ています。
クアルコムの技術を使用する企業たちは端末、システム当たりの売上の一定部分をロイヤルティとして支払っているそうです。
CDMAの技術開発に大きな役割を果たしたETRIもクアルコムからロイヤルティをもらっています。
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▲ flickr.com ⓒ Janitors |
インテルは世界で最も大きい半導体製造会社で、1971年に最初のマイクロプロセッサーであるインテル4004を作り、以後インテル8088モデルがIBM PCに装着されて有名になりました。
現在はメインボードのチップセット、ネットワークカード、直接回路、フラッシュメモリー、グラフィック、エンベデッドプロセッサーなど通信とコンピューティング関連装置を生産しています。
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▲ flickr.com ⓒ cytech |
アメリカの代表的製薬会社のジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson&Johnson)の子会社であるエチコンは1887年から手術用の縫合糸、傷用縫合装置を製造してきましたが、1947年にジョンソン・エンド・ジョンソンが引き受けて子会社になりました。
1990年代から開発分野を多角化して医療機器および手術器具製品をも開発しています。
現在はアメリカの手術用縫合糸関連市場の占有率80%以上を占めていて、世界約52カ国に製品を販売しています。
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▲ jnjmedicaldevices.com |
有名製薬会社であるアッヴィ(Abbvie)も10位内に入りました。
2013年アメリカの有名医療機器会社のアボット(Abbott)から分社して創立されました。
アボットは各種医療機器、診断装備および栄養製品などを製造する反面、アッヴィは研究基盤の製薬製造企業に分割されました。
アッヴィの代表的な製品としては、リウマチ性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎などに使用される「ヒュミラ」があります。
これ以外にもApple、Google、Facebook、IBMなどよく知られている企業たちがAAA等級の特許を多く保有しています。
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▲ 全体出願対比AAA等級保有現況 |
全体出願に対するAAA等級の特許の割合が高い企業は、保有順とは違ってエチコン、インターデジタル、アッヴィの順でした。
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▲ Abbvie.com |
エチコンは、全体出願数の3,893件の約17.5%である679件の特許がAAA等級です。
アッヴィも全体出願1,452件の約15%の220件がAAA等級特許です。
二つの会社は他の順位内の企業に比べて少ない特許を出願していますが、質的にとても高い特許を保有していることが分かります。
医学、製薬関連分野の上位企業たちである分、源泉技術を設けるための研究開発にとても集中していると思われます。
一方、IBMは特許出願に対する約0.25%水準の205個のAAA等級特許を保有しています。
27年間アメリカの特許取得1位を逃さなかったIBMは、最近10年間アメリカに80,890件の特許を出願しました。なので、相対的にAAA等級特許の割合は低くなります。
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▲ Interdigital.com |
特許管理専門会社(NPE)のインターデジタルも目立ちます。
特許怪物としてもっと知られているインターデジタルは、1972年に設立されて特許を通じたライセンス、訴訟などで収益を得る会社です。
ここ10年間に2,506件を出願していて、この中の約16%がAAA等級でした。ほとんどライセンシング、訴訟などを目的とする特許たちである分、質的な部分にとても力を入れていると見受けられます。
インターデジタルが保有している特許の約10%が標準必須特許と知られています。このような理由でAppleやGoogleなどの巨大企業が引受を試みたものの失敗したことがあります。
3. 引用現況
引用現況を見てみると、AAA等級らしく90%の特許が引用されたことがあって、10件以上の文献に引用された特許は約13,373件でした。
10件以上の文献に引用された特許の出願人を見てみると、エチコン、クアルコム、アップル、マイクロソフトなどの関連業種の上位企業が含まれています。
世界最大通信企業であるAT&Tを含めて糖尿病関連市場の独占的企業であるデクスコム(Dexcom)も名を上げました。
質の高い特許がマーケットリーダーの基本的な条件であることをよく見せています。
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▲ AAA等級特許の引用現況 |
次は、IPC別の出願現況です。
IPC別の出願現況を見てみると特許が多く出願された分野はデータ処理、電気通信技術、医学分野に多く集中していることを確認できます。
G06Fは電気によるデジタルデータ処理に関する分野でマイクロソフトが367件で最も多い特許を保有しています。その次にAppleが238件、Googlが157件、Facebookが151件でした。
その他に、無線ホームオーディオ製品を製造するSONOSという企業が10位内に名を上げました。
SONOSは音楽サービスを提供する約100個の企業と提携して現在のアップルのAI音声プラットフォームを通じて音楽を提供する機能を支援しています。
2017年にはIKEAの家具にSONOSの技術を適用するための協業を発表しています。
この会社はアメリカ、南米、ヨーロッパおよびアジアの一部都市に大規模のインターネットネットワークを運営する会社です。
一時期アメリカで最も大きい影響力を持ったネットワーク通信会社で、インターネットアクセス提供企業でした。
2017年にアメリカの多国籍通信会社のセンチュリーリンク(CenturyLink)が約340億ドルでレベル3コミュニケーションを引き受けました。
アッヴィが96件、パーデュー・ファーマ(Perdue Pharma)が89件、ジェネンテック(Genentech)とバーテックス・ファーマシューティカルズ(Vertex Pharmaceuticals)が46件であり、ギリアド(Gilead)、メルク(Merk)、ブリストル・マイヤーズ(Bristol-Myers)、セルジーン(Celgene)がその後を続きました。
1991年に設立されたパーデュー・ファーマは痛み緩和のための薬物製造に焦点を合わせた会社です。
出願された特許もほとんどがモルヒネと類似する効果を出す麻薬性鎮痛剤(オピオイド/アヘン類似剤)に集中されています。
2007年にアヘン類似剤のOxyContin製品と関連する訴訟で3人の役員が有罪判決を受けて罰金を支払うなどのイシューがありました。
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▲ flickr.com ⓒ Mike Licht |
以後アメリカでアヘン類似剤使用に対する不定的世論が拡散して、2019年9月にトランプ大統領がアヘン類似剤に対する輸入を禁止するまでにアヘン類似剤の乱用に対する被害補償などの訴訟が続けられていました。
2019年、フロリダ、ネバダ、ノースカロライナ州を含めた36州でパーデュー・ファーマと法廷で争い、結局多くの損害賠償金を支払う羽目に陥りました。
損害賠償金を支払う能力が無かったパーデュー・ファーマは結局同じ年の9月にニューヨークで破産申請をしました。
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▲ Gene.com |
アメリカの遺伝工学会社のジェネンテックは、1978年に既存の動物のすい臓から抽出する方式ではなく大腸菌を利用した最初の遺伝子操作合成人間インシュリンを開発して、1982年から「ヒュマリン」という名前で製品を販売し始めました。
以後、心臓治療剤、成長ホルモンなどを開発して急激に成長し、1990年にスイス製薬企業のホフマン・ラ・ロシュ(Hoffman-La Roche)が21億ドルでジェネンテックを引き受けました。
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▲ Vrtx.com |
バーテックス・ファーマシューティカルズは1989年に設立されたバイオ製薬会社です。
現在Kalydeco、Orkambi、SymdekoのアメリカFDA承認を受けた3つの薬品は嚢胞性線維症の治療に独占権を享受しています。
この三つの薬品は2018年の売上額22%成長に大きい影響を与えて、KalydecoとSymdekoのアメリカ特許は2027年、Orkambiは2030年まで満了期間が残っていてしばらくは競争に対する懸念も無く、もっと成長すると見込まれる会社です。
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▲ A61KのAAA等級特許 |
その次の技術分野も医療関連です。診断、手術に分類されるA61Bで1,881件が出願されました。
エチコンが631件で圧倒的に多く、デクスコムが108件、コンフォーMIS(ConforMIS)が41件、デピューシンセス(DePuy Synthes)が40件でした。
エチコンとデピューシンセスはジョンソン・エンド・ジョンソンの子会社で、事実上ジョンソン・エンド・ジョンソンが該当分野の最も多くのAAA等級特許を保有したことになります。
1895年に設立されたデピューシンセスは骨折治療用の繊維副木製作を一として現在は損傷関節再建、骨格損傷などを治療するための製品を販売しています。
1998年にジョンソン・エンド・ジョンソンが会社を引き受けて2010年から股関節、顎インプラントなどに対する問題点が発見されて色んな訴訟に悩まされると知られていますが、現在毎年100億ドル以上の売上を上げている関連分野で世界最大企業に成長しました。
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▲ Dexcom.com |
1999年に設立されたデクスコムは、糖尿病管理のためのグルコースモニタリングシステムを開発する会社です。
アメリカ内の糖尿病市場で圧倒的な占有率を記録していて、最近患者規模が1型より大きい2型糖尿病市場に事業を拡大しています。
関連市場での独歩的な位置である分、デクスコムが保有しているAAA等級特許もブドウ糖測定センサー、測定データのためのシステムおよび方法が主になっています。
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▲ Conformis.com |
2004年に設立されたコンフォーMISは、独自のプラットフォームを通じて患者オーダーメイド型の膝の人工関節を研究開発および製造販売する会社です。保有しているAAA等級特許を見てみると、オーダーメイド型関節のインプラント製造、関節手術のための装置などの技術がほとんどです。
2015年には3Dプリンターを活用した関節インプラント製作技術を開発すると共にナスダックに上場されました。
毎年アメリカで60万件以上の膝関節交替手術が行われている分、今後ももっと成長できると予想されます。
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▲ A61BのAAA等級特許 |
四番目に多くの出願を見せた分野は、H04Wで無線通信ネットワーク関連技術です。
関連分野ではインテル316件、クアルコムが306件、インターデジタルが202件でした。
特にNPEと呼ばれるインターデジタルの場合、自社が保有したAAA等級特許の約50%程度がH04W分野で出願されています。
これまではモバイル関連企業との特許訴訟およびライセンシングなどを進めてきた企業だからこそその目標もはっきりしていると思われます。
5. 現在の権利者現況
AAA等級の現在の権利者現況を見てみます。
実際の出願とは違って現在AAA等級の特許を最も多く保有している企業はアップルでした。
アップルのAAA等級特許保有が増えた理由は、インテルの特許306個を引き受けたためです。
譲渡された特許のほとんどは無線通信ネットワークに関する技術絵2019年アップルがインテルのスマートフォンモデム事業の多数の持分を引き受ける協約を締結して譲渡されたと見受けられます。
インテルは10億ドル規模で締結された該当協約に従って約2,200名の職員がアップルに合流する予定であり、PC、事物インターネット機器および自律走行車などスマートフォンを除いた分野のモデム開発は引き続き維持する計画であることを明らかにしました。
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▲ flickr.com ⓒ Tech.co |
AAA等級特許保有の上位企業でドルビー(DOLBY)が目立ちます。
音響関連企業でよく知られているドルビーは1965年イギリスで設立された企業で現在アメリカに本社を置いています。
オーディオテープから発生する雑音除去のための技術を一として劇場上映用の多チャンネル音響フォーマット、テレビ、モバイル機器、PCまで多様な分野で事業を行っています。
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▲ AAA等級特許出願/現在の権利者比較 |
上記でみた通り、等級が高い特許を多く保有する企業は該当分野でマーケットリーダーの役割を果たしていることが分かります。
質の高い特許を多く保有するほどその影響力はだんだん大きくなります。
引き続き増加している特許訴訟などの紛争で有利な位置になるために、または技術を通じたもっといい経済的価値を確保するために最もいい方法が「質の高い特許」の創出である分、企業たちもそのための研究開発を務め続けています。
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