サムスン電子&アップルの特許戦争と米国特許法289条の関係
アメリカでサムスン電子とアップル間の特許戦争は、アップルがサムスンを相手にiPhoneの丸い角デザイン特許を利用したと訴訟を提起して始まります。1審の裁判部はサムスンのアップル特許侵害を認めて10億ドルに至る巨額の賠償金を賦課しました。以後、約5年間サムスンとアップルの熾烈な攻防が続いて、デザイン特許の侵害保障範囲をサムスンがスマートフォン販売で得た利益の対等額で策定する根拠になった米国特許法289条が論争の中核となりました。
今回は、この米国特許法289条とサムスン&アップルの訴訟の関係について調べてみたいと思います。
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▲ flickr.com ⓒ Kārlis Dambrāns |
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▲ pixabay.com |
サムスンとアップルの特許訴訟は、天文学的な賠償額と先端技術の集約であるスマートフォンに関連する訴訟であったため当事者を初めとしてその他理解関係者と産業全般に及ぼす影響が少なくありませんでした。2015年、サムスンが米国連邦最高裁判所に上告許可を申請して米国特許法289条が集中的に取り上げられましたが、これは2011年に始まったサムスンとアップルの1次訴訟に関連するもので、最大争点である「賠償範囲」算定にとても 重要な問題でした。
1次訴訟は2011年4月、アップルがサムスン電子が自社のスマートフォントタブレット特許を侵害したとサンノゼ地方裁判所に訴状を提出して始まりました。当時サムスン電子は特許法289条の「全体利益対等額」という賠償基準を厳しく適用されてデザイン特許3件を侵害したとの判決に従う巨額の賠償金を賦課されました。しかし2014年、連邦控訴裁判所が1審裁判部が1審裁判部が認めた特許侵害の内、トレードドレス侵害に対して無罪判決を下して、控訴審裁判部はサムスンがアップルに支払うべき賠償金額を10億ドルから5億4,800万ドルに軽減しました。
控訴裁判所の判決においても米国特許法289条が根拠になりましたが、これにサムスンは控訴審直後、デザイン特許侵害部門に対してのみ最高裁判所に上告します。サムスンに賦課された合計賠償金中、3億9,900万ドルはデザイン特許侵害に関連する賠償金であり、これはギャラクシーSをリリースした以後にサムスンが設けた利益の総額でした。
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▲ flickr.com ⓒ David |
サムスンが問題提起をしたのは130年前に書かれた米国特許法289条が規定するデザイン特許侵害時の賠償金算定基準です。米国特許法289条は、”デザイン特許存続期間内に権利者を許可を得ず・・・・・・そのようなデザインまたは類似デザインで製造された物を販売する者は「全体利益金(to the extent of total profit)」対等額を権利者に賠償する責任がある"と明示しています。
米国特許法289条は、1887年米国議会で初めて制定されましたが、これは1885年にカーペットのデザイン特許賠償関連攻防から始まりました。この訴訟で原告側は本人たちのマージンに被告が販売したカーペット個数を掛けた金額を要求しましたが、1審裁判所からこの金額が過渡であると、1個当たり6セントずつ賠償額を賦課しました。こうして控訴審でひっくり返された裁判は、最高裁判所で再び原告勝訴判決が出ました。この判決の2年後である1887年に米国議会が特許法を制定することになり、この時にデザイン特許侵害時には全体利益対等額を賠償するとい基準が確定したのです。
以後、この規定は何回か改定されました。1952年改定法律は250ドルを上回る製品に限って、全体‘製造物品性1’に適用された特許侵害時、全体利益の対等額を賠償するようにしました。1887年特許法制定当時に論難になった故意侵害条項を削除して、デザインが適用された製品製造または販売を通じて得た全体利益という部分を削除して「全体利益対等額」という文句を追加しました。
特許法289条を基に利益の全体を保障を要求するアップルの主張と異なり、サムスンはこういった解釈がスプーンや絨毯のようにデザインが全てだった100年前を基準としたものであり、スマートフォンのように先端IT製品の一部であるデザイン特許侵害を根拠に製品全体の利益に対する賠償を通じて'暴利’を取るようにするのは時代錯誤的であると主張しました。
サムスンの問題提起と共に’第三者法廷アドバイザー(Amici Curiae)2’たちの意見書提出もありました。これは289条の解釈でアップルが勝訴すればデザイン特許保有者に事実上独占的権利を付与することになる可能性が高く、以後デザイン特許侵害事件に大きい影響を与えることに対する懸念があったからです。サムスンを初めとした関係者たちはデザインが製品の全てであった時代に作られた特許法を先端IT時代にそのまま固守するのが果たして妥当であるかの問題を提起しました。
結果的に最高裁判所はサムスンの手を上げました。2016年12月、全体利益の対等額を基準に賠償金を策定した下級裁判所の判決が誤っていると控訴審が開かれた連邦巡回控訴裁判所に差し戻して、控訴裁判所はこれを1審に破棄差し戻しました。
この最高裁判所の判決で特許法289条の改定は行われませんでした。しかし、複雑なIT製品のデザイン特許訴訟の物差しになっていた米国特許法289条の積極的解釈があり、約100年間議論にならなかった旧時代の特許法が新しく解釈されて以後の類似訴訟にも莫大な影響を及ぼすと予想されます。
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1. デザイン特許の基本概念を規定する単語で、米国特許法171条に登場。171条は'製造物品の新しく独創的で装飾的なデザイン'に対して特許権を付与。米国最高裁判所はサムスンの上告申し込みに対する判決文で連邦控訴裁判所の'製造物品性'解釈は特許法289条と一致しないと判断。製造物品性は消費者に販売される製品のみならずその製品の部品までを含む包括的な概念であるというのが最高裁判所の立場。従って、特許法289条の製造物品を最終製品として解釈するのはその法律の解釈が狭すぎるとの意見。
2. サムスンに友好的な法廷アドバイザー(Amici Curiae)の意見を提出したのは、1)主要ハイテクIT企業(Google, Facebook, DELなど)、2)CCIA(コンピューター&コミュニケーション産業連合)、3)機器製造企業(システムズ)、4)主要団体(黒人商工会議所、ヒスパニックリーダーシップ基金など)、5)EEF(電子フロンティア財団、公共知識)、IP法学教授ら37名である。法廷アドバイザーとは、事件当事者ではない第三者に該当して、該当事件に理解関係がある個人や団体を意味する用語である。このアドバイザーたちは自ら所見書を提出して最高裁判所上告許可可否に対して支持または反対意思を表現できる。
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